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算数[つながる“脳力”トレーニング]
「算数、先生のプリントから全部出た」という第一声でSさんから第一志望校合格の報せを受けたのは、二月の、気温は氷点下になろうかという寒い日のことでした。その三ヶ月前まで「算数が不安で不安で…、入試で全部失敗したら…」と言っていたのが嘘のような晴れやかな声で、受けたほとんどの学校で満点に近い手ごたえ、すべり止め校にはトップ合格を果たし学費免除の特待生待遇というおまけまでついた戦果に意気揚々としていました。でも、「プリントから全部出た」のは予想問題が全部的中したから――、ではもちろんありません。そう本人が感じられた秘訣は、[ふくしゅうノート]と[こつノート]を使った、つながりを意識した勉強法にありました。
[復習ノート]
この名称は、とき直しの「復習」とリベンジの「復讐」とからですが、一度解けなかった問題を1ページ1題ずつ書いて、じっくり取り組んでいきます。

このとき、問題も要約しながら書いていく(コピーで仕方ないときもあります)、というのがポイントです。一見まどろっこしいようですが、急がば回れです。重要な部分を読めない、あるいは見落としているばかりに解けないというのはよくあるケースです。そこで保護者や指導者は、つい「親切」な解説をしたくなるのですが、受験生本人が一人でたたかう試験場では誰の助けも借りることができません。問題のヘソを自らつかむ練習こそ、こういう普段の学習の場で行っていく意味は大いにあるのです。
さらに何冊ものテキストを併用し、試験プリント、模擬試験と膨大な量が嵩んでくる受験生活でよく目にしてしまうのは、付箋や蛍光ペンでマークをつけて後で振り返るつもりでも収拾がつかなくなっている光景です。そうなるといきおい「何が分からないかが分からない」という一番悲惨な事態を招きやすくなってきます。それよりも、克服しなければならない問題すべてを一冊にまとめ、自分オリジナルの問題集を作成していくことで、「これをやれば」という目標設定もしやすくなり、学習計画もたてやすくなってきます。加えて、解説を読み、いくら考えても一人ではどうしてもできないものは、問題だけ書いておけば[質問ノート]としても兼用できます。
しかしまた、このノートを振り返ると克服したつもりでもやっぱりできないというも のも出てきます。そういう経験が大事で、その時に自分の弱点を分析していくのです。入試直前期に受験校の過去問を各科目単元ごとにまとめていく作業をしますが、その傾向の分析力、またその対応力の土壌はここで養っていくことができます。このように、[ふくしゅうノート]が発揮する効力は、やればやるほど高まってきます。
このやり方だと、解けない問題ばかりなので最初のうちは辛いと思います。ですが、どれだけ机に向かっただけでなく、どれだけ頭を使って考えられるか、またそれによって出来なかったものを如何に克服してできるようにするかが、学力向上のカギです。解けなかったものをそのままにし、基本をなおざりにしてしまっているケースは「がんばっているのに伸びない」子供に本当によく見受けられます。がんばり方さえ間違わなければ学力は伸びるものなのです。
上の4題をどのようにとらえられるでしょうか。
同じとき方で解ける「同じ問題」と考えられる力がつながる“脳力”です。偏差値が伸び悩んでいる場合、基礎を徹底していきますが、基礎とはつまり、より多くのシチュエーションに対して使い得る手近な道具だというとらえ方をわれわれはします。勉強意外の分野の「基礎」を思い浮かべても、そうだと思います。ただ単に簡単なものという間違ったとらえ方のせいで、無意味なことの反復を強いられ、本人に非がないのに出来なくなっている子供もまた多くいます。
[例題1]
まず、ア+イの三角形AGDと、ウの三角形DGFでは、底辺がDGなので共通で、三角形AGDの高さADと、三角形DGFの高さDFは長さが等しいので、面積が同じになります。


次に三角形ABHと三角形GDHは相似な三角形で、GはDCのまん中の点になるのでAB:GD=2:1になり相似比も2:1になります。したがってAH:HGも2:1になり、アの三角形AHDとイの三角形GHDは底辺の比が2:1で高さが共通ですから面積の比も2:1になります。


したがって三角形アとイとウの面積の比はイを1とするとアは2、ウは2+1=3になるので、2:1:3となります。


答え 2:1:3
[例題2]
てんびん算の考え方で考えると、右の図のようになりますので、がAB間をあらわし等しいので比をそろえるためにの最小公倍数にそろえるとの方は5倍、の方は4倍して、右図のようになるので、16-12.5=3.5%がに相当します。

したがって

よって A=12.5-0.5×5=10%
B=12.5+0.5×15=20%となります。


答え Aは10% Bは20%
[例題3]
線分図で考えると、右の図のようになり、が等しいので、比をそろえるためにの最小公倍数のにするためには5倍、は17倍して右図のようになります。

したがって720円がに相当します。よってなので、はじめの兄の所持金はですからとなります。


答え 4800円
[例題4]
右図のようにになり、その差は79と46の差と等しくとなり、これがに相当するので

したがって


答え 35
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[こつノート]
あくまで使いこなせることを前提にした基礎を身につけるやり方として、[ふくしゅうノート]と相互補完する形で使用したいのが、このノートです。先に挙げた4題では、いずれも中学受験の算数ではものすごく大事な「同じ量を同じ比でそろえる」という考え方を使います。ページの見開きの左にコツを書く、右にはそれで解ける問題をどんどん載せていく。さらに詳しい内容については、是非実地の授業の場でお伝えできればと思いますが、算数の根幹のエッセンスを知る、それを使って解ける問題のバリエーションを増やしていくと、「算数ってやることが多くて」という悩みはコペルニクス的転回をしていくことでしょう。「図形」、「速さ」、「数の性質」共通する部分が多いと思えれば気持ちも楽になるばかりか、さらに先を自分で見つけてやる楽しみも持てるようにもなってくるものです。
Sさんの場合、直前期には1日で1週間分の伸びを見せてくれました。傍に立つ保護者も指導者も感動を禁じえない成長でした。本番の試験には成長の軌跡が刻まれた[ふくしゅうノート]と、何でも来いという自信に満ちた[こつノート]をお守り代わりに持っていって、緊張することなく臨めたということでした。
これを、まとめれば良いと言って、376×(49+51)=37600 と教えるのは簡単です。そう教わって理解できる子供もいます。ですが、ピンと来ない子供もいます。
そこで、このような図を使って、376×49+376×51という式の変形を、意味のあるものに見て完全に納得し、自ら使えるようになるまで徹底的に反復するということをやっていきます。授業の形態で「習熟度別」という言葉を最近よく耳にするようになりましたが、この習熟度別の究極の形はつまるところ個別指導だということに他ならないでしょう。
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